《MUMEI》

徹がアイマスクを外すと、目の前で服を着ていたのは…

黒髪長身の、従姉妹の志穂ではなくて

茶髪で小柄な、ケイトだった。

わかっていても、行為後、徹は毎回虚しい気持になった。

「明日は、この『手』で私に尽くしてよね」

「この、手フェチ」

「声フェチに言われたくないから」

「別に、フェチじゃない」
…そう。

二人共、フェチではなかった。

ただ、ケイトが徹の本命の志穂にそっくりな『声』を持つように…

徹がケイトの本命の男にそっくりな『手』を持っていたのだ。

そして、徹が志穂に『弟』としか思われていないように、ケイトも本命に、『妹』としか思われていなかった。

更に、本命に『ずっと好きな人』がいるところまで似ていて…

二人は…

互いの傷を舐め合うように、体の関係を持った。

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