《MUMEI》

「しかし、絶倫の徹が、二ヶ月以上禁欲生活なんて、頑張ったね。
しかも、『志穂』と同じ屋根の下で」
「あともう少し我慢できたら…
大さんが仲村を認めなかったら…
志穂は、俺のものだったのに…」

それが、徹が果穂と交した約束だった。

三ヶ月、志穂に手を出さず、志穂に近付く男のライバル役を演じ続けたら…

果穂が探した、相手ではなく。

徹が、志穂の、『結婚相手』になる。

…ただし。

高山兄妹のうちの一人でも、認める男が現れたら。

徹は、潔く身を引く。

それが、条件だった。

「で、結局、初恋の…本命に、志穂をとられたと」

「いちいち確認するな!」
徹はケイトに怒鳴った。

「いいじゃない。私だって、同じだし」

ケイトが言う通り

ケイトの本命は、既婚者だった。

しかも、その相手は…

ケイトの、姉、だった。

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