《MUMEI》

あの日以来の練習は、体育館を使う部活動の生徒に負担を掛けた。

体育館自体は全焼は免れ、一部が焼けた程度だった。

修復工事や、全体が消防車からの散水による浸水で、とても使える物じゃない…

となると、向かう先はグラウンドや外周、それと…




『今日ここ何時までいいんだっけ?』

「8時だよ。」

サユ。

『まっず…。』

「塾?」

『うん、抜けなきゃだ。』


市の市民体育館。

事情を配慮してくれた市が、体育館が復旧するまで貸し出してくれる事になった。


『じゃあ帰るね。』


テストまでもう1週間を切っていたため、時間が早まり午後7時からになっていた。

この時期はただでさえ疲れるのに…負担ばっかりだ。




「一葉が疲労困憊だ。」

『梓〜、体育館返して(泣)』


塾でぼやいても何にも成らず。


…そう言えば、カズ兄にはあの火事の日の事は聞いていない。

篠崎と…ホントは何があったのか、なんだか怖くて聞けないでいた。

体育祭で話してた時、喧嘩でもしたのかな?

高2が中2相手に?

…有り得ない。

だいたいカズ兄は、身形(みなり)はああでもケチな理由で人を遠ざけたりしない。


「一葉っ…これどうやるの…?」


ヒソヒソ声で梓が聞いて来た。

…。


『…今どこのページやってるの…?(泣)』

「ダメだこれは(笑)」



二人の問題なら、首は突っ込まないべきだよね…?

男の子だし。

また勘違いなら傍迷惑だもんね。

…突っ込まれても迷惑そうだけど。

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