《MUMEI》

楓は、会議が終わると、ナースステーションに戻った。

すると、噂好きな新人三人組が、楓に近付いてきた。
「…何?」

楓が面倒くさそうに、顔を上げると

「主任、高山先生のプライベート知ってますか?」

「高山先生の彼女について知りませんか?」

「高山先生結婚しちゃうんですか?」

三人が、同時に質問してきた。

「ごめん、知らない」

楓は、それだけ言うと、会議で配られた資料を読み始めた。

『彼女』『結婚』

もし、それが最近大が仕事中集中していない理由なら、…楓は許せなかった。

命を預かる者として、失格だ。

「「「え〜」」」

三人が悔しがるので、楓は
「本人に訊けば?」

と提案した。

「「「駄目ですよ〜」」」
また、悔しそうに三人は声を揃えた。

「何で?」

楓が質問した。

「高山先生、主任以外には、クールなんですよ」
「私達なんか、話しかけても超スルーだし」
「迫っても、全然反応してくれないし」

三番目の発言に、楓は眉間にしわを寄せた。

楓にとって、病院は神聖な職場だ。

「えっと…とにかく主任は高山先生の『お気に入り』なんです」

三番目の発言をした新人は、慌てて言った。

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