《MUMEI》

「嬉しくないから、それ。私、高山先生苦手だし」

「「「あ…」」」

三人組が、楓の後ろを指差したので、楓は振り返った。

そこには、申し訳なさそうな顔をした大が立っていた。

「主任ちゃん、ちょっといい?」
「…はあ…」

気まずい空気の中、二人は中庭に移動した。

「あのさ、今度の休み、暇?」
「は?」

突然、大がそう言ってきたので、楓が首を傾げた。

「実は、相談にのってほしい事があるんだけど…」
「仕事関係ですか?」

楓が、真面目な表情になった。

「いや、プライベートなんだけど、君の力を借りたいんだ」
「…はぁ」

大が、楓の小さな手を握りながら詰めよってきた。

アップでも、やはり大は美形だ。

普通なら、クラクラするシーンなのだが…

「…もしかして、最近仕事に身が入らないのは、その相談事絡みですか?」

大にまったく興味がない楓は、冷静に質問した。

大は、ゆっくり頷いた。

楓は、ため息をつくと…
「仕方ないですね、わかりました」

と答えた。

大は、『ありがとう!』と、楓の手をブンブンと上下に振った。

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