《MUMEI》

楓と会う約束を取り付けて、嬉しいはずなのに

その時。

大の胸が、チクリと痛んだ。

それは、楓に『苦手』と言われてから、時々続いていた。

数日後。

大が指定した待ち合わせ場所は、病院近くの割と大きな自然公園だった。

「今日は、来てありがとう、主任ちゃん」
「高山先生、それ、外でやめてくれませんか?」

私服の楓は、同じく私服の大を睨んだ。

「じゃ、楓でいい? 俺も大でいいから。
同い年だし、タメ口で」
「わかった」

名前を呼ばれて、楓はドキッとした。

大は、早く楓が自分の名前を呼ばないか期待したが…
それが叶わず、ガッカリした。

何故『ドキッ』としたり、『期待』や『ガッカリ』するのか、この時の二人にはわからなかった。

「じゃ、行こうか」

そう言って、大は自然な動きで楓の手をとって、公園に入った。

また、楓の胸がドキッとした。

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