《MUMEI》

そして、大は簡単に楓に追い付き、誤解を解いた。

「…もしかして、楓、志穂に嫉妬した?」

大の質問に、楓は

「違うわよ、何で私が!
私はね、貴重な休みに何であんたなんかの恋愛相談をうけなきゃいけないのかって、
思ったの!」

「『大』」

真っ赤になった楓に、大が極上の笑みを浮かべた。

「…は?」
「『あんた』じゃなくて、『大』って呼んでほしいな」

大が、至近距離で迫ってきた。

楓は、『この男のどこがクールだ』と思った。

「い・や!」

楓が言い切ると、大は

「痛かったんだよね〜ここ」

と、楓が叩いた頬を指差した。

「性格、悪い」
「…今頃、気が付いた?
…で、呼んでくれるよね。
優しい主任ちゃんは」

その言い方に、楓は腹を立てた。

「楓よ。悪かったわね、大」

チュッ

「え?」

大は、不思議そうに、そっと触れた楓の…柔らかい唇の感触を確かめるように、頬を押さえた。

「さて、妹さんに会いに行く、か。待ってるだろうからね」

「楓って、…結構、大胆」
呆然とする大に…

「今頃気付いたか」

と、楓は笑った。

「…まいった」

大は、呟いた。

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