《MUMEI》

「失礼しました」

大志は何とか予定通りに教授にレポートを提出できてホッとした。

そして、講義を受ける為に教室に入ると…

一斉に、友人達に囲まれた。

「な、何?」

大志は慌てた。

すると、一人が

「お前、『クイーン』に名前覚えられたって?!」

と、興奮しながら訊いてきた。

大志はキョトンとして…

「『クイーン』って何?」
と、首を傾げた。

周囲からどよめきが起こる。

「もしもし、大志君」
「…何?」
「君、何年生」
「四年」

来年の春には、卒業予定だった。

「それで、何で『クイーン』知らないわけ?!」

そんな事言われても、大志は毎日勉強するのに必死で、人間関係は最低限にとどめていた。

「なぁ、こいつ、もしかして…」
友人達は、顔を見合わせて、
「『姫』は、知ってるよな?」
と訊いてきた。

大志は、首を横に振った。
『クイーン』も『姫』も、知らなかった。

大志はこの時、何でカタカナと漢字なのかなと思っていた。

友人達は、

「信じられない!コイツ」
と、口々に叫んだ。

そして、代表して一人の友人が、熱心に説明してくれた。

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