《MUMEI》 「来るまでに随分と時間を掛けたな。いくらまで値上げしたんだ? 商人は金に成ることしか動かんのだろう?」 好戦的な物云いだ。 「……俺は商人の子供ではありません。 血は北王子であるはずですけど? しかし心は何処にも置くつもりはありません。 返答が遅れたのは父を殺した鬼が棲んでいるそうで、柄にもなく怯えていたんです。 父が得なかった北王子と兼ね合う為に来たつもりですけれど。」 鬼だ、俺をいたぶって反応を窺っている。 春三は俺達の方を心配そうに見ている。 「よく此処まで育ったものだな行儀作法は学んだろう? 歓迎しような。」 兼松は一粒、鼈甲飴を取り出しこれみよがしに指を舐めてから手を突き出した。 握手を求めている。 「まさか、儂の厚意が受け取れないと?」 威圧して来ている。 「父さん、あまり林太郎君を困らせないで下さい。」 春三が耐え兼ねて間に入ってきた。 前へ |次へ |
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