《MUMEI》
抑えきれない気持ち
   〜栄実視点〜


私の言葉を聞き、下を向いていた海が

そっと私に視線を戻した。

海の瞳からは、先程の真剣さだけではなく力強さも伺えた。


海のこんな瞳を見たのは久しぶりだった。

長い間一緒に居たけれどこの瞳を見たのは
今までで一回だけだった。

私が自分との約束を破った日にみた瞳。

私の心を揺さぶった瞳。


海の瞳に釘付けになっていると、海の口から思わぬ一言が飛び出した。

「もう自分のこと許してやってもいいんじゃないのか?」

信じられない一言に私は声を失う。

するとまた海が口を開く。

「俺が言えることじゃないけど・・・

栄実はあの日から、ずっと一人で苦しんで来た。

あれから5年も経つんだし、もう「そんな簡単なことじゃない!!」

気がつくと私は、ベンチから立ち上がり、海の言葉を遮り叫んでいた。


そんな簡単に許されることじゃないの・・・。

時間なんて関係ない。


どれだけ私が陽奈子のことを傷つけたか・・・。


思い出しただけで、胸が千切れそうになる。


一番大切な親友だったのに・・・。


もう会うことも、連絡をとることさえ出来ない。

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