《MUMEI》 ―数日後。 大志は果穂に呼び出された。 「何ですか?」 大志は、警戒していた。 「あの、実はお願いがあって…」 果穂が珍しく、控え目な態度なので、大志はドキッとした。 久しぶりに間近で見た果穂はやはり美しく、『あの夜の事』の事を大志は思い出して、首を左右に大きく振った。 「…まだ、何も言ってないけど、大志は、そんなに私が嫌い?」 「いや…今のは…」 大志が慌てると、果穂はすかさず 「じゃあ、好き?」 と訊いてきた。 「それより、お願いって何ですか?」 大志は話題を反らした。 「私、見合いさせられそうなの」 「はぁ…」 果穂はお嬢様だから、そういう事もあるのかと、大志は考えていた。 「…それでね、大志に恋人の『フリ』をしてほしいの」 「何で、俺?」 頭を下げる果穂に、大志が不思議そうな顔で質問した。 「大志がいいの。…駄目?」 果穂が可愛いらしく、首を傾げた。 大志は迷ったが… 「別に、いいですよ」 と答えた。 『人助け』のつもりだった。 その時果穂が、大志に見えない所で、小さくガッツポーズをした。 前へ |次へ |
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