《MUMEI》

「私は、果穂ちゃんが決めたなら構わないわよ。
佐藤君は、『種馬君』達の中では、ましだと思うし」
桜子は、固まったままの大志の目の前で、果穂の腕につかまりながら、自分の意見を述べた。

「大志は?」

果穂に訊かれても、大志ははまだ固まっていた。

そもそも、今日は大志にとって予想外な事ばかり起きていた。

恋人のフリがいつの間にか、『本物の婚約者』になっているし…

その上…

果穂には、桜子という

『女』の『恋人』がいて

桜子は、『果穂と大志の結婚を許す』と言う。

「高山さんと、真部さんは、恋人同士なのに、俺がそこに入って大丈夫なんですか?
…おかしくないですか、これ」

大志は素直な意見を述べた。

すると、桜子は、悲しげな表情になり…

「仕方ないでしょう。果穂ちゃんは、高山家の『跡取り』なんだから」

と言った。

「別に、それだけじゃないけどね」

果穂の言葉に、大志は首を傾げた。

「私は、『男』と『女』、どっちも同じ位好きなの。
感情も快感も違うから、どっちがいいかなんて比べられないし。

結婚するからって桜子と別れるつもりはないし、桜子と付き合っているからって、結婚しないつもりもない」

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