《MUMEI》

『だから、どっちも同じ位好きなら、両方手に入れる事にした』と果穂は笑った。

「同じ位って、俺と、真部さんが?」

大志の言葉に、果穂は頷いた。

高校からの付き合いの、桜子と、最近知り合ったばかりの大志が比較の対象になるのかと、大志は疑問だったが…

「時間は関係無いのよ」

と、果穂が大志の考えを見透かすように、話しかけてきた。

「私は、大志も桜子も、同じ位『ちゃんと』好きよ。
愛してるわ。

…大志は?」

「俺、は…」

果穂は、美しく、聡明で、強引で…

どこか危なげで、…憎めない。

非常識な提案でも、果穂が言うと、何故か大志は従ってしまっていた。

もしかしたら、自分は…

「好き…かもしれない」

いつの間にか、果穂に惹かれている。

思わず口に出した大志に、果穂が確認した。

「『かもしれない』?」

その美しい顔に詰め寄られた大志は…

「好き、ですよ」

と、白状した。

「私がいても、大丈夫?」
今度は、桜子が確認した。
大志は、ため息をつきながら…

「この人の非常識は今に始まった事じゃ無いですし…
まぁ、『惚れた弱味』って事で」

と、苦笑しながら答えた。

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