《MUMEI》

『ずっと、欲しかったの、果穂ちゃんの『娘』が。
だから…
志穂ちゃん、頂戴』
「だ、駄目よ、そんなの!」

果穂が、大声を出した。

その声は、悲鳴に近く、大志が表情を変えた。

『いいじゃない、放任するくらいなら、くれたって』
「桜子…今、どこにいるの?」

『さて、どこでしょう?』
「ふざけないで!」

怒鳴る果穂に、桜子は笑いながら、

『私達のマンションよ。
…大志連れてきたら、志穂ちゃん、いじめちゃおうかな〜』

と、からかうように言ってきた。

「今から行くから!待ってて」

果穂は電話を切ると、慌てて大志に状況を説明した。
桜子の様子は明らかにおかしかった。

大志は、『夜になっても連絡なかったら、警察に通報するから』という条件付きで、果穂を送り出した。

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