《MUMEI》 桜子は、ピアニストを目指しているだけあって、体に比べて手が大きく、指が長く、…握力がある。 その事をよく知っている果穂は、足を止めた。 その時… 「おねえさん?」 首に違和感を感じた志穂が目を覚ました。 「志穂!」 「かあさん?」 続いて、志穂は果穂を見つめた。 志穂が、体を動かそうとすると、桜子が、志穂の首にかけた手の、指の、力を込めた。 「やめて!」 果穂が、叫ぶと、 「おねえさん、けがしてるのに、むりしちゃだめよ?」 と、桜子を見上げながら、志穂が言った。 「け、が…?」 果穂が、志穂の言葉に反応した。 桜子は、志穂の言葉に驚きながら、 「本当に、いい子ね」 と、苦笑した。 そして、桜子は、果穂に、説明を始めた。 大志と果穂の結婚式を見届けた後、果穂と離れ、夢に生きようと決意した事。 留学先のウィーンでやっとピアニストとして認められ始めた事。 交通事故に遭って… 指を負傷し、 ピアノの弾けない体になってしまった事。 「何も、無いのよ、私には。だから…果穂ちゃん、志穂ちゃん、頂戴? 大事にするから… お願い」 桜子は、志穂を抱き締めたまま、泣き崩れた。 前へ |次へ |
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