《MUMEI》

―沙弓の家

何やってんだあの二人…部活にも来ないで。


『ただいまー。』

「お帰り。ジャージなんかでどこ遊びに行ってたのよぉ。」


二人にするべきじゃなかったな〜。

まあ…篠崎次第だけど。


『あ、もう10時過ぎてたんだ。部活終わってからお喋りしてただけ♪』

「ふ〜ん、じゃあご飯は?」


篠崎大和…

絶対そうだ。


『食べた。…ラーメン屋で♪』

「連絡入れてよ〜、作ったのに!」

『ごめんお母さん、朝食べるからっ。お風呂入って来るね。』





気持ち良い♪



びっくりした。

うちの学校のジャージだと思ったら、一葉と篠崎なんだもん。

ラーメンも一気に冷めたね。

別に普通の男女なら良かったんだけど、あの二人はね〜。

篠崎、まさか一葉の事…

いや、一葉の方?

どっちにしたって、よろしくない。


一樹くんと篠崎が話してた時に、さつきも気付いたはずだしな〜。

佳代はどうなんだろう。

孝太は…あの事件の後のギャラリーだったし。


二人が学童を辞めた後、学校で会ってもあの話をする事は一切なかった。

何度か言おうと思ったけど、言葉にならなかった。

一葉は…記憶喪失で、だからさつきは…

今でもあのままの記憶のはず。


こんなんだし、篠崎と一葉の事は応援するんだろうな。

でもあれが起こって…

それでも何があったか知らないけど、今でも仲良いし。


さつきは…凄く素直で真っ直ぐな、純粋な子だった。


一葉は…凄く人を思い遣り正義感に溢れた、優しい子だった。


あの時までは、一葉の方がさつきを引っ張ってたっけ。









”サユね、孝太が好きなんだぁ♪かっこいーもんっ!さつきは?”


”さつき、大斗くんが好きなの!優しいから大好き♪そうだ、一葉は?”


”え、さつきも…”

”えと!!いちはは…。…あ、いちはは大和くんが好き!”


”そうなの?!じゃあ、二人で「朝倉」のお嫁さんになれたら良いね、一葉!”


”さつき…うん!”


”…。”





”一葉、大斗くんが好きって言ってなかった?”


”好きだけど…いいの、好きじゃない事にしたの!”








私も忘れてたのになー。

でも、篠…

大和。



あんたに一葉を好きになる資格なんてない。

前へ |次へ


作品目次へ
感想掲示板へ
携帯小説検索(ランキング)へ
栞の一覧へ
この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです!
新規作家登録する

携帯小説の
無銘文庫