《MUMEI》 「…………は?」 藤田君は何を言ってんの……。 「どん引き?」 当たり前のこと聞いてきやがって。 「どん引き。」 いくらでも答えますよ。 一歩後ずさって藤田が言う。 安全さをアピールしてくれているようだ。 「じゃあ、なんで体熱くしてるの?」 藤田があんまり嘲笑うので蒸気が、ぐーっと上へと上がってく気がする。 「触ってないくせに!!」 知った風な口ぶりをして。 「分かるさ。空気が、視線が熱っぽい。」 その、言い回しが気障だ……! 同い年のくせに。 藤田が話す度に見える舌先を振り切って、走る。 …………変だ! 藤田と話すとき、口許に目がいく。 そして、この動悸の激しさは走っているせいだと思っておく。 前へ |次へ |
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