《MUMEI》

「何だ、父さん、俺と同じじゃん」

祐は、嬉しそうに慎の肩を叩いた。

「俺は、こんなに若くなかったけどな」

慎が苦笑した。

「祐は、外見志穂で、中身慎なんだな」

祐希が、呆れたように言った。

「…」

志穂は、無言で希を見つめていた。

そして、希の手を取った。
呆然とする男性陣に、『いいから、三人ともここにいてね』と言い残して、志穂は希と寝室に入っていった。

希の表情を見て、志穂はかつての自分を思い出していた。

昔―

一途に、慎を想っていた、あの頃を。

叶わぬ恋だと、思っていた、あの頃を。

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