《MUMEI》

「祐希が…好きなのね、希」

志穂の一言に。

希は、涙が止まらなくなった。

『女が駄目』で、『父さんが好き』

その事実に。

衝撃に。

心が壊れてしまいそうだった。

「初恋は、実のらないっていうけど…

こんな…の…
ひど…い…よ…っ…」



希の言葉に、志穂は何も言えなかった。

志穂の初恋は…慎だったから。

どんな慰めの言葉も、軽いような気がした。

迷った末に、志穂は…

祐希を呼び出し、事実を話した。

祐希は驚き、

「俺にどうしろって?」

と志穂に質問してきた。

「あなたが慎と別れない事も、希を受け入れられない事もわかってるわ。

…あの子も、わかってる。
ただ、あなたとの事を『思い出』に変えるきっかけがほしいのよ

お願い、祐希

言葉でも、行動でもいいから」

そう言って、志穂は、寝室に、祐希と希を残して出ていった。

「こっちは、外見慎で、中身志穂かよ…しかも、相手、俺って…」

と、祐希は誰にも聞かれないように呟いた。

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