《MUMEI》

「希…」

祐希が声をかけると、希が顔を上げた。

涙は流れ続けていて

真っ赤な目をしていた。

祐希の胸が痛んだ。

愛する慎と、人間として好きな志穂の間に生まれた、可愛らしい子供。

不思議と自然にまるで自分の子供のように、愛せた。
その子供を、今、自分が泣かせている。

しかし、祐希は、希の想いには、答えてあげられない。

「ごめんな…」

祐希は、そっと、希の涙を拭った。

拭った先から、また涙が溢れてくる。

「なぁ、俺。どうしたらいい?」

本当に、どうしたらいいかわからなくて、祐希は希に質問した。

「泣き止んでくれよ…」

すると、希が小さな声で…
「本当に…父さんが、好き、なの?」

と訊いてきた。

「あぁ…」

祐希は、頷いた。

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