《MUMEI》

「父さんが、男だから?」
希の質問に、祐希は首を横に振った。

「だって、祐希は…」
「じゃあ、お前は、男なら誰でもいいのか?」

祐希の質問に、希は首を横に振った。

「だろ? 俺は、慎が、慎だから…愛してるんだ。

だから、お前も、お前だから、愛してくれる男を見付けろよ」

「私が、私だから…」

呟く希に、祐希は頷いた。
「大丈夫。お前は、可愛い。外見も中身も。
俺が女が大丈夫なら、絶対、愛してる」

「祐希…… ダメ?」

「え?」

その言葉に、祐希は耳を疑った。

「それは…」

「一回だけ」

希は真剣な表情で頼んだ。
「お前、初めてだろ?」

「だから、初めて好きになった人にしてもらいたいの
…お願い」

「俺、女にするの、初めてなんだけど…」

「じゃあ、初めて同士だね、私達」

希が笑った。

「最初で、最後だぞ」

祐希が念を押して…

そっと

希の唇に

自分の唇を

重ねた

それは…

触れるだけの、優しいキスだった。

「ありがとう」

やっと泣き止んだ希に、

「これ、『秘密』にしてくれよ」

と、祐希は言った。



『裕と希と…祐希の秘密』

【完結】

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