《MUMEI》
中断
「ロゼ様!!」
遥か上空から龍が落ちてくる。ロゼとアルトレアの間に割って入るように・・
その龍の上には禾憐が乗って居たのだが・・気が付いた者はごく少数。
ズドン!!
地面に刺さった龍が本来の姿へと戻っていく。
圧縮された風は暴風を生みながら周囲に散っていく。中心地に居たアルトレアは風に吹き飛ばされそうになりながらもロゼを見据える。
「ロゼ様!!早く逃げましょう!!」
禾憐の声に、今までの狂気が消え、瞳に理性的な光が戻ってくる。
「・・・アルトレアさん、私の負けですね。」
剣を投げ捨て、禾憐を置いてアルトレアの前に進むロゼ。
次第に暴風は止み・・周囲で混乱していた者達もロゼとアルトレアに注目を始める。
「ロゼ様!?」
「・・・さぁ、抵抗はしません。捕虜にするなり、好きになさってください。」
「な・・何を言ってるんですか!!逃げるんです!!早く!!」
禾憐が腕を引っ張るがソレを押さえ、ロゼは完全に無防備にアルトレアの眼前に佇む。
「・・どう言う意味ですか?」
「先ほどの私は・・殺戮に喜びを感じていた。そのような私であれば・・皇国に必要は無く、私が生きる必要もありません。そして・・殺さずとも良かったはずの者を殺した。その罪を償いましょう。」
それで言う事は全てだと、静かに目を閉じるロゼ。
「・・・・・・ヴィア、丁重にお連れしなさい。」
剣を鞘に収めたままアルトレアはロゼから離れて行く。
「は、了解しました。」
頷くとヴィアはロゼの側へと立つ。
「ロゼ様にさわるな!!」
禾憐がヴィアの前に立ち塞がる。
「禾憐、やめなさい。他の者も抵抗してはなりません。」
ヴィアに促されるまま、ロゼはアルトレアの後に続く。
「ロゼ皇帝陛下。我々は先ほどの攻撃でかなりの被害を出したため、一時撤退します。今、優先するべきは皇国及び、リーベルからの軍の対応ですので・・」
近衛騎士達もそれぞれ武器を奪われたが、縄で縛られる事も無く、馬をあたえられ、コーリア軍の本国である神聖コーリア教国へと向かう事になった。
「ロゼ様、どうして逃げなかったんですか!!」
「・・ごめんなさい、禾憐。だけど、逃げるわけにはいかなかった。」
「あ〜〜も!!意味解らないです!」
周囲をコーリア軍「風姫」が警備についている中で不満そうな声を上げている禾憐。
「もう少し、静かにしていただけませんか?」
ヴィアが当然のように意見するが・・
「ベーっだ!!静かになんかしないよ〜〜!!」
緊張感の欠片も無い。
「禾憐、静かにしてください。」
「やだ!!ロゼ様が逃げなかった理由に納得するまでロゼ様の命令は聞かないからね!!」
困った表情をしているヴィアを見て、ロゼが注意するが逆に騒ぐ結果となる。
「申し訳ありません、ヴィア・・さんでしたね?」
ロゼがヴィアに対して軽く頭を下げる。ヴィアは益々困った表情を浮かべて下を向いた。

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