《MUMEI》 ―女子1戦目 センターサークル内に、両チームのジャンパーが向かい合った。 そして審判がボールを高くトスし、ジャンプボールで試合開始。 タップしたのは北中だ。 そのボールがそのまま北中の5番、加奈さんに繋がった。 「よしっ!」 加奈さんはボールを受けるなり、まだ守備の整っていないディフェンスの隙を突き、速攻からレイアップを決めた。 「っしゃあ!」 開始数秒で北中が先制ゴール。 ちなみに、中学生なので各クォーターは8分ずつ、第二と第三の間のハーフタイムは10分。 (現在とルールが異なるのかは分かりませんが、当時はこうでした) 北中側のベンチやスタンドから、歓声が沸き起こった。 「加奈さん凄い!」 『うん、かっこ良い!』 この後も割りと有利に試合が経過した。 第一、第二共に選手の交代はあったものの、サユとあたしの出番は未だなく。 14点差で北中がリードしたまま、ハーフタイムを迎えた。 例の8番は… 3つのファウルを取っていた。 そのおかげでフリースローから得点も得たけど。 …まさかファウルアウト? 「奥永。次、行くぞ。」 「はい♪」 広田が言うには、桐子と交代らしい。 『サユ、頑張ってね!!』 「うん!一葉も準備しとくんだよ?♪」 『まあ…一応だけ。』 後半が始まった。 第三開始2分、例の8番が4つめのファウルを取る。 良い感じで…ファウルアウトになりそう。 てのも失礼だけど。 でも、見ちゃった物は仕様がないし。 そうこうしている内に、広田に呼ばれた。 「大島、準備して。奥永と交代。」 『はい。』 広田がスコアラーに選手交代の意図を告げ、ゲームクロックが止まったのを機に審判が指示を出す。 「いーちーはー!!」 …結衣ちゃんたちだ。 例の8番が4ファウルになり、やや控え目になったせいか、一気に点差を28点に広げて第三も難なく終わった。 第四との間の2分間のインターバルに入ると、広田が勝ちを見越してか面白い事を言い出した。 「最後、2年生全員出す。」 3年生のセンター2人を残して。 第四が始まって数分。 あたしがゴール前でパスを受け、そのままシュートを放とうとした時。 ゴール下でうちのセンターと必死にポジション争いをしていた例の8番が、何を思ったのかあたしに向かって飛び掛って来たのが視界の隅に見えた。 意味わかんないし、…当然遅い。 とっくにシュートは放たれ、ボールも弧を描き…2ポイント。 『…え』 ドガッ ピーッ! 前へ |次へ |
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