《MUMEI》

(相変わらず、ここも、多いな)

私は、『青』の人達とすれ違いながら、目的地へ向かった。

コンコンッ

「どうぞ」

中から聞こえる優しい声にホッとしながら、私は扉を開けた。

「義母さん(かあさん)…」

そこには、見る度に痩せていく、義母の姿があった。
義母さんの『青』は、子供達よりも、暗い色をしていた。

「子供達の様子はどう?」
「元気よ、皆」

私達は、いつも同じ会話を繰り返す。

ある日突然病魔に襲われて以来、義母さんは、毎日子供達と…

「ゆきは、大丈夫?」

「うん」

私の心配ばかりしていた。
そして決まって、最後は…
「ごめんね…」

と、涙を流した。

「大丈夫よ」

私は、義母の小さくなった背中を擦りながら、何度もそう繰り返した。

大勢いた子供達も、皆、里親が決まり、あの施設の土地と建物を売れば、義母の今までの入院費や、今後の生活費は何とかなる。

『今後』…

義母の余命は、医師が宣告した期間を過ぎてはいたが…

(大丈夫)

目の前の義母は、まだ、笑っていた。

たとえどんなに暗い『青』でも…

生きている人には、『色』がある。

だから、まだ、義母は、大丈夫だ。

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