《MUMEI》

「あ……落ちた。」

三つ抱え切れなくて、ナタデココヨーグルトジュースが落ちた。

ナタデココヨーグルトジュースの缶が転がっていく。

「七生……」

七生の爪先で缶が止まった。

「上手いの?」

素早く缶を開けてぐびぐびと飲まれた。

「うわ、最低!まだ一口も飲んでないのに!」

「はい、返す」

半分飲まれた……。

「要らない……」

眉間に皺が寄ってしまう。

「味、気にならないの?」

気になるけど、飲まれたものだから…………しかし七生は実に上手そうに飲む。


ゴキュ ゴキュ

いい音だ……
上下する喉から伝っていく様子が分かる。

「や、やっぱり一口……」

言いかけた瞬間缶が直角に傾いた。

「……あー!酷い!」

返された缶は空っぽになっている。

缶に集中していると陰が出来た。
七生が接近してきていた。気を緩めるとこうだ。

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