《MUMEI》
橙(だいだい)
三日後。

今日は、私の高校の卒業式。

義母は、『どうしても行く』と言っていたが、結局、ドクターストップがかかり、外出許可は出なかった。
私は、一人きりだった。

周囲は、暖かな

『橙』に染まる人達で溢れていた。

よく、幸せや幸運は、『黄』だと言われるが

私にとっては

『黄』より温かみのある、『橙』の方が

『幸せ色』に見えた。

こんな日は、下級生達の『青』ですら、薄く見えた。
「ゆき!」

その時。

一際眩しい『橙』の同級生
宮崎汐里(みやざきしおり)が私に駆け寄ってきた。
汐里は私と出席番号が近く、自然と仲良くなれた友達だった。

いつも、『橙』の汐里に、私は癒されていた。

「どうしたの?汐里」
「あのね、これから卒業記念試合に、和泉学園(いずみがくえん)に行くの!」
「へぇ〜」

『和泉学園』は、この辺りでは有名な、名門校だ。

『文武両道』がモットーで、特に剣道部が、とても強くて有名だった。
それに対して私達の高校は公立の、平凡な普通校で。
普段なら、相手にもされないだろうが、女子部主将の汐里だけは実力が飛び抜けていたのと、『卒業記念』ということで、特別、これから試合を行うらしい。

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