《MUMEI》

    チーン




そういえば近くにエレベーターがあった。



「 む…… 」

聞こえてないのか七生はキスを続行させている。

無理、誰か来るから、見られるから!

突き放そうとしたら壁に追い込まれた。


足音が近い。


見られるだろが馬鹿…………!!


後ろが空く。
急に背中が反った。段差がある。




   ……パタン

「はっ……はぁ、はぁ 」


やっとで息が吸える。

解放された場所は暗かった。追い込まれた壁は非常階段の扉だったようだ。

「どきどきした?」

七生は口の周りのジュースを手の甲を拭い取る。
口許が明らかに笑っていた。

「お前なんか…………準決勝止まりだ!!」

すっかり汗をかいたペットボトル二本を抱えて階段を駆け上がった。

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