《MUMEI》
桃色軍団
「うわぁ!」

バスに乗った私は、思わず声を上げてしまった。

「ね、すごいでしょ、この『間違った気合い』の入り方」

「う、うん」

汐里が言ったのは…

熱心にメイクをしたり、香水を付けたり、笑顔の練習をする女子部員達の『様子』だったのだが…

私が、驚いたのは、

『色』だ。

『橙』の汐里と、『肌色』の私と、『黄』の運転手さんをを除けば…

全員。

見事に、『桃色』

だった。

私は…これと同じ光景を、テレビで観た事があった。
ちなみに、テレビになると、色は全体的に薄く見えた。

私が観たのは…

『アイドルの追っかけ』

と呼ばれる集団だった。

私は汐里に、和泉学園剣道部には、芸能人かそれ並にかっこいい人がいるのか質問してみた。

すると、汐里は、芸能人なんか比べ物にならないほど素敵な人がいると答えた。
(なるほど)

どうやら、『桃色軍団』のお目当ては、その『素敵な人』らしかった。

私が納得していると…

「良かった〜」

と、汐里が笑顔で言った。
「? 何が?」

「ゆきが、男に興味無い子で」

「別に、そんな事無いけど…」

私は、ただ毎日子供達との生活で、精一杯だった。

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