《MUMEI》 「痛っ……」 躓いた。学祭でくじいてから捻り癖ついた。 痛い。 口の中が甘ったるいのに後味が苦い気がする。 階段を駆け上がる音が近い。 「……どうした!」 追い付くのが早いんだよ、来るな筋肉馬鹿。 「ちょっと捻っただけ。」 片足で立ち上がる。七生が支えた。 「触ったら七生は何か下心がありそうだから嫌だ。」 エレベーターを目指し階段を一段ずつ下る。 「……ごめん。」 ……否定しろよ。 「今この所を過ぎんとする時、閉ざしたる寺門の扉に寄りて、声をのみつつ泣く一人の少女あるを見たり。」 不意に七生の美声が階段を下る音と響く。 「舞姫……読んでなかったとこだ。」 エリスが豊太郎と出会うとこ。 前へ |次へ |
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