《MUMEI》

「ゆき、モテるのに、彼氏作らないじゃん」

「そんな…」

確かに昔、『桃色』の男の子に告白された事はあった。

ただ、私はその男の子の事を何も知らなかったから、正直に『ごめんなさい、あなたの事、知らない』と答えた。

すると、おそらくプライドの高かったその人は、あっさり『色』が変わった。

汐里は、『橙』ばかりだから、覚えやすかったが…

大抵の人間は、『色』がちょくちょく変わる。

だから、私はなかなか人の顔と名前が覚えられなかった。

「それにね。フリーの子は、大体、『和泉学園の御剣神(みつるぎじん)君』はチェックしてるのよ」

「そんなにすごいの?」

私の質問に、汐里は呆れながら説明してくれた。

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