《MUMEI》

御剣 神『様』は、私達と同じ、高校三年生。

和泉学園で三年間成績トップを守り、尚且つ男子剣道部を全国制覇に導いた、文字通り、『文武両道』な人。

そして、『とにかくかっこいい人』らしい。

学園内にファンクラブがあるとか、会員にしてほしいと他校からも問い合わせがあったとか…

しかも、家がかなりなお金持ちらしく、後を継ぐために英才教育を受けなけばいけないから、大学には行かない。

つまり…
今日は、御剣『様』の『引退試合』でもあるのだ。

「そんなにすごい人なんだ」

「そうなの!でも、私は、純粋に、向こうの女子部と試合できるのが嬉しいの」
「うん、それはわかる」

汐里は、ずっと『橙』のままだ。

「も〜、だから、ゆき、好き!」

「苦しい…」

私が汐里に抱きしめられていると

『桃色軍団』が、歓声を上げた。

和泉学園の校舎が見えたのだ。

二台のバスが駐車場に入ると、『桃色軍団』が、一斉に駆け出した。

後には

ポツンと残された私と汐里と運転手さんと…

いつの間にか、薄い『青』に変わった男子部の人達だった。

(可哀想)

彼等は明らかに、御剣『様』の『引き立て役』だった。

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