《MUMEI》 ◇◆◇ 「式神‥?」 「つまり俺達は、平安京の安全を守ってるんだよ」 そう朱雀が説明してやると、胡蝶は納得してようだった。だがその表情にはまだ恐れが窺える。 それに気付いたのは、白虎だった。 「いけない、これじゃ驚くわよね」 途端、何か光のような物が現れ、胡蝶の視界を白く染めた。 次に彼女の瞳に映し出されたもの──それは人に変化した四象達であった。 驚きで目を丸くする胡蝶。 「わたし達は人の姿をとる事も出来る。いわゆる、仮の姿ではあるがな」 そう言った玄武の姿は、肩の上で切り揃えた玄い髪を持ち甲羅っを背負った女子。 傍らに立つのは朱雀。朱い髪をした男。朱色の翼は消し切れなかったらしく、背中についたままである。 白虎はというと長い白髪の女子で、獣の耳と尾を持っている。 青龍は一番幼いようで、始終うとうとと眠たげだ。青い髪は水の色を思わせる。青龍だけは、完全な変化が可能らしい。 「もう、恐くないでしょ?」 青龍がにっこりと笑って言うと、胡蝶も笑い返した。 その時だ。 鋭い妖気を感じ取った玄武が振り返った。 「鉄鼠!?」 鉄の爪を持つ大鼠が、今まさに襲いかかろうとしている所だった。 ◇◆◇ 前へ |次へ |
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