《MUMEI》

―男子1戦目

Bコートの3グループ目、11時30分から始まっていて、男子にとっての実質上の初戦。

シードで来たため、先々日の試合で1勝をあげているチームが相手になる。

同じバスケ部でも女子の試合ではない為、昨日男子がそうであったようにスタンドからの観戦。

昨日と言えば…

あの初戦は勝った。

2戦目で負けてしまい、3年女子の夏は終わった。


『いっ…。』

「一葉、大丈夫?」

その2戦目、あたしは出場出来なかった。

『…ん、へーき!』

「昨日のでしょ?凄かったね〜、笑いそうになったもん!(笑)」

何故なら、8番が飛んで来たから。

『…笑ってたよね?』

…凄い形相で、あたしの上に。

「だぁって〜…あはは!」

二人で床に倒れ込み、ベッドの上の行為さながら重なった。

頭も肘も腰も痛いんだけど、筋を違えたのか腹筋まで痛い。

8番は当然ディフェンスファウルとなり、5ファウルでファウルアウト。


…仕方がないよ。

対戦相手に、「ルール違反しないで下さい。」なんて挑戦的な事言えない。

それとも、あたしへの災難を知らせる物だったのかも知れないけど。

そこは「見え」なかったし。


「お、勝ったじゃん♪」

『うん!稲田、フルで出てたね。』

「あいつ凄いね〜、さすがだよ。」

『大も、足が速くて速攻かけられるセンターで目立ってたね。』

「大はあのルックスだけで充分目立つ♪」

「よぉ。」

『…稲田っっ。お疲れ、準々決勝進出だね!』

「うん♪まあシードあったし。」

「稲田〜、お疲れ!…てかあれ真治くんじゃない?!話し掛けてくる♪」

『あ…。』

「…おぅ。」


稲田は…

小学生の頃から、サユの事が好きだ。

あたしが思い出せる範囲で、少なくとも小5から。

もしかしたら、今も現役かも。


一方サユは…

昔からイケメンてのが好きな、顔から入るミーハー。

小学校低学年の頃から既に、そんな系統の人が好きだったような気がする…たぶん。

今は真治くんが良いみたい。

でも、あんな勢いで好きになるなんてのは知らなかった。


稲田はどちらかと言うと、篠崎系。

サユの好きな感じが某人気アイドル事務所の青年達だとすると、この二人は…

ラグビーやK−1、ボクシングなんかやってそうな感じ。

正直あたしは、篠崎の事をかっこ良いと思い始めている。

気持ちが+αになってるのは重々承知だけど、それにしたって稲田は充分かっこ良い。

…ホントに好みの違い。

稲田は実際双子の弟と共にラグビーをやっていて、小学生の頃から選抜メンバーとして今も現役。

ただ北中にラグビー部がないからバスケをしているだけなのに、こんなにも上手。

サユ…絶対もったいない。



この日の15時から行われた男子準々決勝。


勝った。

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