《MUMEI》
霞む人
剣道部の『卒業記念試合』が行われる和泉学園の武道館に到着すると

『桃色軍団』の数が、数倍に膨れ上がっていた。

その間をかきわけるように、私と汐里と、男子部の人達は建物の中に入った。

そして、汐里と男子部の人達は、それぞれ更衣室に移動した。

私は、応援に来たからには、汐里が見える席に座りたかったが、応援席は『桃色軍団』に占領されていて、入れそうもなかった。

(どうしよう)

私が迷っていると、

「最初は女子だって〜、つまんな〜い」

「トイレ行っとこうか?」
「場所取られたらどうする?」

三人の和泉学園の制服を着た『桃色』さん達が出てきた。

私は、

「すみません」

と声をかけた。

「「「はい?」」」

突然他校生の私に話しかけられて、『桃色』さん達が、首を傾げる。

私は、恐る恐る…

「あの、友達の応援したいんで、女子部の試合の間だけ、席を譲ってもらえないでしょうか?
男子部の試合になったら、私はバスに戻るんで」

と、頼んでみた。

三人は、しばらく小声で話し合っていたが、

「「「御剣様の出番になったらどいてね」」」

と、念を押して、私に席を譲ってくれた。

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