《MUMEI》 金色の女(こんじきのひと)「キャッ!」 私は、椅子から転げおちた。 「ゆき?!」 その声に、汐里が反応した。 「…誰ですか?」 「あ、応援に来てくれた、友達です」 「そうですか」 そんな会話を知らない私は、落ちた時に打った腰を押さえてうずくまっていた。 周りから、クスクスと笑い声が聞こえた。 汐里には悪いけれど、このままバスに戻ろうと私は立ち上がった。 『友の試合を見ずに帰るつもりかえ?』 「席が無いんだから、仕方ないでしょう!」 (ん?) 今の、声… 私はチラッと上を見て、 … 「ごめんね、汐里!私、外出てるから!」 そう、汐里に叫ぶと、武道館を飛び出した。 「…何、『一人で』慌ててるわけ、あの子」 不思議そうに、汐里は首を傾げた。 「…そうですね。試合、始めますけど、いいですか?」 「あ、はい!お願いします」 汐里は慌てて竹刀を持つ。 「…行ってこい」 その時、小声で御剣は『何か』に命令した。 前へ |次へ |
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