《MUMEI》 『待て』 (え?) ガシッ 『まだ、話は終わっておらぬ』 その感触に、私は驚いた。 ちゃんと 生身の人間と同じように 「掴める…んです…か?」 『女の人』はニヤリと笑って、私の右腕を掴む手に、力を込めた。 「…痛ッ…」 あまりにリアルな痛みが、これは現実だと私に自覚させた。 (とにかく早く行かなきゃ!) 私は、『女の人』を左手で突き飛ばしてみた。 すると 『な…に?!』 「え…」 『女の人』が、私の遥か後方に吹っ飛んだ。 私は、わけがわからなかったが… とにかく早く病院に行きたくて、呆然とする『女の人』に背を向けて、再び走り始めた。 それからタクシーを拾って、無事に私は病院に到着した。 (何だったんだろう…) 私は左手を見つめた。 手の甲が、いつもより、熱いような気がしたが しばらくすると おさまったので 安心した。 しかし、私の腕にはあれが夢ではない証拠に くっきりと 『女の人』に掴まれた跡が残っていた。 前へ |次へ |
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