《MUMEI》
左手に宿る神
『その願い、叶えよう』

「…え?」

義母の手を握りしめて祈っていた私は思わず目を開けた。

…誰も、いない。

しかし、確かにさっき…

『男の人』の声がした。

私の、すぐ、側で。

それに、その声は

いつもの夢の声にそっくりだった。

「誰、なの?」

『お側におります、我が主よ』

ドクンッ

「熱っ…」

私に答えるように、左手の結晶形のあざが、脈打ち、光り出した。

「ここに、いるの?」

私が祈った神様が?

私の問いかけに…

『私は神ではありません』
と『男の人』は答え…

『私を宿すあなた様こそが、この国を守る『守護神』なのです』

と、続けた。

「私?」

私が質問すると、答えるように、左手は脈打った。

「私、そんなの、…違う」
『いいえ、今はまだ目覚めていないだけで、確かにあなた様は、守護神です』

違う。

それに…

私は、『国』なんて、守る力はない。

目の前にいる義母の『青』さえ、どうにもできないというのに…

(待って)

私は、最初に言った『男の人』の言葉を思い出した。
さっき、確か…

「義母さんを、助けられるの?」

私は、問いかけてみた。

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