《MUMEI》

◇◆◇

「これは申し訳ない。驚かせてしまいましたな」

 翁は穏やかな笑みを浮かべ、胡蝶に向き直ると、言った。

「我らは四象と同じく式神なのです」

「式神‥ですか?」

 そう、この八人は四象と同じく式神であり、それぞれ

騰蛇

六合

勾陳

太陰

貴人

天后

大裳

天空

である。

 困惑する胡蝶に、今度は天后が進み出、その問いに答える。

「私たちは神の末端として、今のように地上に姿を現す事があるのです」

「何の‥為に?」

「皆様を御守りする為です」

「守る‥?」

 胡蝶の問いに、天后の傍らで腕組みをして佇んでいた貴人が徐に口を開いた。

「姫は何も案ずる事は無い。平安の事は俺達に任せておけ」

「‥はい、分かりました」

 しばしの後、

「すっかりお邪魔をしてしまいましたな。では、我らはこれにて失礼致しますぞ」

 そう言うと天空は、砂を纏って消えた。

 他の式神達も後に続く。

「四象」

 貴人の声に、玄武、朱雀、白虎、青龍が立ち止まる。

「何?」

 尋ねたのは朱雀。

 すると貴人は背を向けたまま四人を制した。

「お前達は残れ」

「何で!?」

 朱雀の問いには答えず、貴人は続ける。

「太陰、六合。お前達もだ」

「うん、分かった。ね、太陰?」

「うむ。姫様の事は我らに任せるのじゃ」

 太陰が頷くと、貴人は騰蛇、勾陳達を連れ、書き消すように去って行った。

「‥‥‥‥」

 唖然とする胡蝶に、太陰が近付く。

「どうされたのじゃ、姫様?」

「あのう‥‥‥」

 胡蝶は怖怖と太陰、そして六合達を見詰める。

 そして、意を決したように口を開いた。

「私‥‥‥姫君ではないんです」

◇◆◇

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