《MUMEI》
帰宅 〈私〉
「よし、帰るか!!」


元気よくそう言うと、
清水さんはトラックのドアを開いた。



「ほら、乗った乗った!!」



戸惑う私を促して、
自分も運転席に乗り込むと、エンジンをかけた。



「…あの〜…」



車が出発してからおよそ20分。
私は恐る恐る口を開いた。



「ん?なんだ!?」



にこにこと、清水さんが答える。



「あの、これから、どこ行くんですか…??」



訊くと、清水さんは一瞬キョトンとした顔をしたかと思うと、
いきなり豪快に笑い出した。



「がっはっは!!何だみつる、
やけに無口だと思ったら、やっぱ頭打ったんだろ!!」


「…えー…と…」



返答に困っていると、
トラックが静かに停まった。



「…ほら、着いたぞ!!」



窓の外を見ると、
そこは何だか見たことのあるような景色…



私の目に入ったのは…




『椎名酒店』



の看板だった。

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