《MUMEI》 一体私の何を疑っているのか。 それは、わからない。 「お迎えに上がりました。ゆき様」 黒いスーツを着た『灰色』の人達は、一斉に私に向かって頭を下げた。 歩道で、そんな事をされては、目立つ。 「困ります。一体、何なんですか?」 私は恥ずかしくなった。 道行く人達は、皆そんな私達をチラチラ見ていた。 「私達は、あなた様のお父様の実家の者です」 代表して、一人の『灰色』の人が説明した。 『お父様』 「…父が、生きているんですか?」 私を、『捨てた』。 顔も知らない『父親』が。 「それは、私の口からは、何も申し上げられません」 『灰色』の人は、私の質問には答えなかった。 かわりに、黒塗りの外車に乗るようにと、言われた。 この車で、『お父様の実家』に行くらしい。 私は、『色』を確認した。 殺意や悪意の『黒』は見当たらない。 ただ、『灰色』なだけだ。 普段の…義母が生きていた頃の私なら、それでも警戒して、こんな事はしないだろうなと思いながら… 私は その車に乗り込んだ。 (どうせ…) 私は一人だ。 その時。 私の考えを否定するように、左手が熱くなった。 前へ |次へ |
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