《MUMEI》

「え…?」

オレンジ頭の人が、私の顎を掴んで自分の方に引き寄せた。

「結構、可愛いし…気に入ったな」

「はぁ…」

間近で見つめられて、私はどうしていいかわからず固まっていた。

「おい、明良(あきら)。やめろ」

「何だよ、右近(うこん)」
オレンジ頭の人―明良さんの腕を、茶髪の人―右近さんが掴んだ。

「それ以上『抜け駆け』すると俺も…左近(さこん)も怒るぞ」

右近さんが、無言の長髪の人―左近さんを見つめると、左近さんは確かに無言で明良さんを睨んでいた。

(『抜け駆け』?)

私は、その言葉の意味がわからなかった。

「嫌ね、群がっちゃって。ね、神?」

いつの間にか『赤』から『桃色』になった女の人が、御剣君に近付いきながら言った。

「余裕ぶってて、いいわけ?翔子(しょうこ)」

明良さんの言葉に、女の人―翔子さんは、御剣君を見つめて囁いた。

「あんなまだ目覚めてもいない『守護神』なんて、『私達の障害』にならないわよ」
―と。

御剣君は、何も答えず

「そろそろ、時間だ。
母上がお呼びだ。 …行くぞ」

と、四人に声をかけた。

「何してる、お前もだ」

御剣君はそう言って、私の腕を掴んで歩き出した。

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