《MUMEI》
紅(くれない)
(何…?)

その部屋に入った時、私は寒気がした。

さっきいた部屋より、数倍広い部屋。

一段高くなった台座の上から―

『赤』というより

血のような、『紅』色が広がっていた。

こんなに激しい『怒り』を
『憎悪』を、私は感じた事はなかった。

「どうした?さっさと座れ」

御剣君に言われ、私はゆっくりと、御剣君の隣に、台座の前に座った。

他の四人は、私達の後ろに並んで座っている。

「あなたが、『宮本ゆき』?」

『紅』の『女の人』は、優しく話しかけてきたが…

私は怖くて顔があげられなかった。

「そうです、母上。
…さっさと顔を上げろ」

『母上』

『紅』の女の人は、御剣君の母親らしい。

(どうして…)

こんなににくまれているのか、私にはわからなかった。

すると、その人は、台座から下りて、私の目の前に立った。

私は…震えが止まらなかった。

「緊張しているのね。
いいから、顔を上げてみせてちょうだい」

それでも、私は顔を上げられなかった。

「お前、…いい加減にしろよ」

(そんな事言われても…)

『お任せを、主』

金色の女の人が、私の後ろにまわりこみ、私の顔を持ち上げた。

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