《MUMEI》 「まっ…待ってください!!」 (…!) 男を呼び止めるため立ち上がり、振り返ったその顔は間違いなく 「優流…?」 男は肩越しに優流を一瞥すると、再び俺の方…つまり公園の出口の方向へと歩みを進めた。 歩きながら、乱れたようには見えない襟を更に整える。 その手は革だろうか、黒い手袋に覆われていた。 「っ…」 優流が怒りのためだろうか、顔を赤くするのと唇を噛むのとが、遠目にもわかった。 男は【こっち】に近づいてくる。 (うわ、出口方向に隠れんじゃなかったあ…。するつもりじゃなかったとはいえ、盗み聞きしたから…。見つかったらやっぱ、気まずい、よな…。) 俺は勝手にどぎまぎしていた。 「………」 不意に男が優流を振り返った。 なんということもない仕草だが、何故か隙を感じさせない動きだった。 「……ご自由に。」 言葉とともに男は優流に何かを放った。 優流は飛んできたそれを危なげなく受け取り、それを何か認識したのだろうか、顔を歪めたかと思うと俯いてしまった。 . 前へ |次へ |
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