《MUMEI》 . 「こんばんは」 「っわ!」 優流を見ていた俺は、男が屈み込む俺を見下ろしていること…と言うか、いつの間にこんなに接近してたのか… 気づかなかった。 男は凄まじく爽やかな笑顔で、俺の返しを待っていた。 「あ、う、こんばんは……」 俺はなんとか言葉を絞り出した。 (やべー…よな?…てか、さっきとキャラが変わりすぎじゃ…) 「この近くに住んでいるのかい?」 男は完璧なスマイルのまま小声でで訊ねてきた。 逆に怖い。 「は、はい…。」 「そうなのかー。この町は、なかなか良いところだね。こんなとこに住めるなんて、羨ましいなあ。」 「は、はあ…。」 男は一瞬笑顔を崩し、腕時計を見るとハッとしたような素振りをみせ、また笑顔に戻った。 「じゃ、暗いから気を付けて帰ってね。」 「………」 言葉を返せずにいる俺に、完璧な笑顔のままひらひらと手を振り、男は俺に背を向けた。 「……頼……よ…。弘…くん…。」 最後に男は何か呟いていたけれど、俺はただ呆然とその背中を見つめて、色んなことを考えていた。 そんな俺を現実に引き戻したのは 前へ |次へ |
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