《MUMEI》

.



「っ…わりぃ…のかよ…」

頭を抱えてベンチに座り込んだ、優流の震えた声だった。


「っあ!」

俺は事情を…いや、せめて優流との関係だけでも訊ねようと男が行った方向を見た。

でも


「あれ…」


すでに男はその姿を消していた。


俺は頭を掻くと、立ち上がり優流の座り込むベンチへ


…一生懸命にどう話しかけるべきか考えながら、歩み寄った。




「…っう……」

「…優流」

「…!!?」


俺は考えた挙げ句、まずはベンチの背もたれ越しに優流に声を掛けた。

その驚き方はまあ、想定の範囲内ってやつ。

「ひ、ろき…?」

「うん。」


相手の気持ちが(色んな意味で)高ぶってるときは、こっちは冷静に接する方が良い…よな?

「な、んでここに…」
優流は泣いてるのを隠そうとしてるんだろう。
頻りに顔を掻く仕草を見せた。


「いやぁ…」

(ここの言い訳は用意してある…)

「ここの自販機のアイス、喰いたくてさ。ついでに部室の賞味期限切れたポテチでも鯉にやろうと思って、さ。」

「そ、そう…か……」

(………。)

優流は何故優流がここにいるのかなんて、聞いて欲しくはないだろう。

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