《MUMEI》

(あれ?)

屋敷の中に入った私は、違和感を覚えた。

外から見た感じより、中の方が、明らかに…広い。

「いらっしゃい。ちゃんと、君の部屋も『できて』るよ」

「あ…お邪魔します」

笑顔で私を出迎えたのは、明良さんだった。

「あ、やっと来た」

続いて、右近さんと

相変わらず無言の左近さんが現れた。

「あの、翔子さんは?」
「部屋にいるよ」

明良さんが答えた。

(やっぱり…)

理由はわからないけれど、私は翔子さんに嫌われているらしかった。

「…」

「あの?…」

私を見つめていた左近さんは、私から荷物を取り上げた。

「え?」

「…こっち、…部屋」

そして、スタスタと先に歩き出した。

私は、慌てて後を追う。

「お、珍しく左近、積極的じゃん」

「左近は、小さくて、可愛いもの大好きだからね。
待ってよ、左近」

右近さんが左近さんの隣に並び、明良さんは私の後ろからゆっくり着いてきた。
「…ここ」

そう言って、左近さんは私の荷物を部屋の中に置いた。

「ここ、ですか?」

左近さんは、無言で頷いた。

そこは…

とても広い和室だった。

ちゃんと、専用のトイレもお風呂もついている。

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