《MUMEI》

「あの……」

控えめに佐藤が口を開く。さぞや、驚かせたことだろう。

「ごめんごめん」

我に返り襟を整えた。
佐藤は小さく息をつく。


「先輩はあったかい。毛布に包まったみたいです。

……藤田も、あったかかった……。」

「毛布みたいに?」

佐藤は首を横に振る。



「藤田はなんだか違うみたいです。見つめられるだけで、網に捕まったみたいに身動きがとれなくなる。
苦しいから、わーってなるんです。」

「……さとー……」

それは、恋っていうんだよ?

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