《MUMEI》
それは変わらぬ波音と、2
「おはよう。悠君。」
家から出ると玄関の前には咲が既にいた。
「一応、電話で挨拶はしたんだけどな。」
「うん。でも、顔を合わせたらまたしたくなったの。だから、おはよう。」
「はいはい。おはよう。」
適当に返答しながら、のんびりとしたペースで待ち合わせ場所まで歩く。本来は薫との待ち合わせ場所があるのでそこで咲とも合流するのだが、何故か今日は家の前で待っていた。
「そういや、何で今日は家の前にいたんだ?」
「うーん、理由は特に無いかな。ただ何と無く待ちたかっただけだよ。」
「ふーん。」
何か理由があるとは思ったが、こいつのことだから本当に何と無くなのかも知れない。

待ち合わせ場所には薫だけでなく未央もいた。
「未央がいるとは珍しいな。朝練は休みか?」
「まぁね。今日体調悪いのよ。」
「大丈夫か?」
「大丈夫だろ。どうせ未央の事だからかき氷食べすぎたんだろ。」
「あんたと一緒にすんな!!」
未央がいつより少し弱く薫を叩く。まぁ、いつもより弱いといえど大分威力はあり、バランスを崩しかけていた。
「んじゃ、何なんだよ。原因は。」
「女の子には色々あるの。」
薫の質問に答えたのは未央ではなく咲だった。どうも、咲にはわかったらしい。
男軍勢はただ首を捻るしかなかった。

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