《MUMEI》
決着。刃VS棘
「・・降伏を。」
「ヤダね。」
ニヤっと笑うと鞘を大きく振りかぶり・・
「無駄な事を!!」
ブチリ!!
腕にさらに深く「リディルの左腕」が食い込み、骨さえも抉っていく。
「獅地破翔陣!!」
地面に叩きつける。
ズドン!!
地面に叩き込まれた鞘を中心に、衝撃波が走り・・周囲の地面を抉り飛ばしながら爆ぜる。
「く・・・やってくれる!!」
ヴィアが体勢を立て直す。
掴んでいたはずのセイの腕は無く、「リディルの左腕」に名残のように肉片と血が付着しているだけ。
「・・・次で決着だ。」
掴まれていた右腕をだらりと下げたまま、左腕一本で、地面に落ちている刀を器用に鞘へと納める。
一見すれば居合いの構え。だが・・
「その傷では満足に刀を握ることさえできないと思いますが?」
それでも用心深く構えをとるヴィア。
「さぁ・・どうだろうな?」
十数メートルの間合いを詰めるように疾走、右腕は力なく下がったまま・・
「出来れば、殺したくありませんでしたが・・」
「リディルの左腕」で剣を握り、構える。
間合いに入ると同時・・セイの体を真っ二つにするつもりで振り下ろす。
振り下ろされる一撃を見据え、左腕を上へ。
そして・・柄を口で咬み刀を抜き放つ。
「ンンン!!(訳 喰らえ!!)」
バキィィン!!
砕音を残し、ヴィアが吹き飛ばされていく。
吹き飛ばされていくヴィアを見送って口から刀を放す。
刀身には闇が纏わり付き、黒く染まっていた。
「・・・殺したくないってのは同感だな。」
ヒュンヒュン・・
「とは言え・・一人では無理か。誰かと合流しないとな。」
ヒュンヒュン・・プス。
ヴィアの折れた剣が落ちてくる。
「痛ってええええ!!」
セイの足に刺さった。
思わず声を上げながらも急いで姿を隠す。
「ぅぅ・・・何でだよ。」
ベッと折れた歯を吐き出し・・
「歯残しておけば・・直せるかな?」
拾って懐にしまった。

「ガハッ・・・」
吹き飛ばされたヴィアが血を吐きながら立ち上がる。手には折れた剣と元に戻った「リディアの左腕」。
戻った後には大きくアザが出来ていたが・・骨も折れてはいない。
一瞬、見えた闇色の刀身を思い出す。
「・・・最後の最後で刃を抑えたとでも言うのか、随分と侮辱してくれる男だ。」
悔しそうだが何処か満足したような表情を浮かべながら、アルトレアの元へと戻る為、歩き出す。
「ヴィア様!!」
遠く、自分を探す部下が近づいて来るのを確認すると意識を失った。

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