《MUMEI》 「驚いた? 左近は水の『守護神』だから、水を作り出せるんだ。 明良さんは、『剣』の力は俺達よりあるけど、自分自身で火は生み出せない。 これができるのは、左近と、翔子だけ。 だから、翔子には近付けないんだ」 (そうか…) 翔子さんは、風の『守護神』。 きっと、相手を風で飛ばしたりして、自分の身を守れるのだと、私は思った。 (じゃあ、私の、『これ』は?) 私が右近さんに掴まれている左手を見つめていると、左近さんが私の顔の前にコップを近付けた。 『飲め』と言うことらしい。 「飲まないの? 左近の水は、美味しいよ」 「…いりません」 私は首を横に振った。 「それより、離して下さい」 「飲んだら、いいよ。 出口も、教えてあげる」 コップを握る左近さんの手は、相変わらず私の顔の前だし、右近さんは掴んだ手を離そうとしない。 (そんな事言われても…) こんな状況で勧められる水を、とても飲む気にはなれなかった。 「何も入ってないよ。左近。俺にそれ、ちょうだい」 右近さんの言葉に、左近さんは私の目の前にあるコップを右近さんに渡した。 右近さんは、その水を、ためらいなく飲み干した。 前へ |次へ |
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